Tamura et al. (2016)

標準

第二言語習得研究でこれまで扱われてきた明示的・暗示的知識の定義について,認知心理学の分野での意識的・無意識的知識の定義を参照しながら再考を迫った論文です。これまで,暗示的知識とは母語話者が言語使用に用いるものとされ,「早く,かつ無意識的に」用いられるとされ,一方で明示的知識とは,「遅く,かつ意識的な」知識であるとされていました。この論文では,文法性判断課題ののちに主観的測度を測定し,学習者が文法性判断になんらかの規則を適用したか,または直感による判断かをたずねました。英語のtough構文(e.g., the problem is tough to solve)に焦点をあて,この文法項目に対しては直感による判断であると答えた場合に正答にいたる確率が高く,その際の反応時間は遅くなる傾向にあることが判明しました。つまり,無意識的である知識は必ずしも早く作動するとは限らず,そうした知識を日本語を母語とする英語学習者が獲得している可能性を示唆しました。この結果はこれまでの第二言語習得研究における明示的・暗示的知識の枠組みからは捉えることができず,意識軸とスピード軸が斜交していることを想定することにより学習者の文法知識を捉えることを提案しました。

Tamura, Y., Harada, Y., Kato, D., Hara, K., & Kusanagi, K. (2016). Unconscious but slowly activated grammatical knowledge of Japanese EFL learners: A case of tough movement. Annual Review of English Language Education in Japan, 27, 169–184.

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