Nishimura et al (2017)

標準

ライティングによる絵描写タスクを日本語を母語とする英語学習者に課し,その際に用いる文の数に制限をかけることで統語的に複雑な文の産出を誘発し,学習者がどのような従属節を用いて文を複雑に書こうとするのかを明らかにしようとした論文です。別途行ったエッセイライティング課題をライティングの熟達度として操作的に定義し,熟達度によって用いられる従属節の数が異なるのかも検討しました。結果として, 文の数が制限されることにより等位節,関係節,非定型節の産出が増え,これらの従属節は文を複雑にするために学習者がよく用いることが明らかになりました。また,非定型節は熟達度が高くなるほど多く用いられる傾向にありました。これらの結果に基づき,節の数や節の長さなどの指標を用いるのではなく,節の種類にも着目することで,学習者のライティングをより詳細に捉えられる可能性について論じました。

Nishimura, Y., Tamura, Y., & Hara, K. (in press). How do Japanese EFL learners elaborate sentences complexly in L2 writing? Focusing on clause types. Annual Review of English Language Education in Japan, 28, 209–224.

Tamura & Nishimura (2016)

標準

名詞の複数形の頻度が高い複数形優位名詞(plural-dominant nouns)と,単数形の頻度が高い単数形優位名詞(singular-dominant nouns)の処理と表象について,日本語訳と絵とのマッチングタスクを用いて検証した論文です。単数形もしくは複数形で刺激語が提示されたのち,日本語訳か絵が提示され,刺激語の表すものと一致しているかを判断するタスクを日本語を母語とする英語学習者に課し,反応時間を比較しました。結果として,日本語訳とのマッチング課題では複数形に対する反応が単数形に対する反応よりも早かったのに対し,絵とのマッチング課題では複数形優位名詞の複数形に対する反応は複数形優位名詞の単数形よりも早いことが示されました。これは,複数形優位名詞の複数形は意味概念への直接的なルートを通るのに対し,複数形優位名詞の単数形はいったん日本語訳を介して意味概念にアクセスしている可能性を示しており,単数形と複数形の頻度の違いにより単語の処理プロセスが異なる可能性を示唆しました。

Tamura, Y. & Nishimura, Y. (2016). L2 word processing of singular- and plural-dominant nouns in English. Journal of the Japan Society for Speech Sciences, 17, 17-37.

Tamura et al. (2016)

標準

第二言語習得研究でこれまで扱われてきた明示的・暗示的知識の定義について,認知心理学の分野での意識的・無意識的知識の定義を参照しながら再考を迫った論文です。これまで,暗示的知識とは母語話者が言語使用に用いるものとされ,「早く,かつ無意識的に」用いられるとされ,一方で明示的知識とは,「遅く,かつ意識的な」知識であるとされていました。この論文では,文法性判断課題ののちに主観的測度を測定し,学習者が文法性判断になんらかの規則を適用したか,または直感による判断かをたずねました。英語のtough構文(e.g., the problem is tough to solve)に焦点をあて,この文法項目に対しては直感による判断であると答えた場合に正答にいたる確率が高く,その際の反応時間は遅くなる傾向にあることが判明しました。つまり,無意識的である知識は必ずしも早く作動するとは限らず,そうした知識を日本語を母語とする英語学習者が獲得している可能性を示唆しました。この結果はこれまでの第二言語習得研究における明示的・暗示的知識の枠組みからは捉えることができず,意識軸とスピード軸が斜交していることを想定することにより学習者の文法知識を捉えることを提案しました。

Tamura, Y., Harada, Y., Kato, D., Hara, K., & Kusanagi, K. (2016). Unconscious but slowly activated grammatical knowledge of Japanese EFL learners: A case of tough movement. Annual Review of English Language Education in Japan, 27, 169–184.

Tamura (2015)

標準

Fotos (1993)の追行研究として,気づき(noticing)の測定方法に焦点を当てた研究です。Fotosと同様に意識高揚タスク(consciousness-raising task)を用いた文法指導を行い,その後読解中に気づいた箇所に下線を引く課題を行いました。その後,刺激再生法と呼ばれる事後インタビューで,下線を引いた際の思考過程を調査した結果,学習者は単に形式に注意を向けたから下線を引いたとは言い難い結果が得られました。今後の研究では,気づきを様々な角度から調査する必要性があることを示唆しました。

Tamura, Y. (2015). Reinvestigating consciousness-raising grammar task and noticing. JABAET Journal, 19, 19–47.

Tamura & Kusanag (2015c)

標準

Kusanagi et al. (2015)で開発された文法的慎重性尺度の下位尺度である語彙・統語的慎重性と語用論的慎重性について,文脈完成課題と読解中に文法的誤りに下線を引く課題を用いて妥当性の検証を行いました。文脈完成課題は語用論的慎重性と,読解課題は語彙・統語的慎重性とそれぞれ弱い相関を示し,文法的慎重性尺度の下位尺度としての語用論的慎重性と語彙・統語的慎重性の基準関連妥当性を示す新しい証拠が得られました。

Tamura, Y. & Kusanagi, K. (2015c). Validation of the grammatical carefulness scale using a discourse completion task and a reading and underlining task. LET Journal of Central Japan, 26, 75–84. 

Tamura & Kusanagi (2015b)

標準

日本人の英語学習者を対象として,文法性判断課題を用いて明示的暗示的知識の測定を試みたものです。対象項目を,英語の非断定的述語(non-assertive predicate)として,非断定的述語の補部(complement)に対する意味的制約への知識表象を検証しました。時間制限のない文法性判断の結果を明示的知識の指標,読みなおしをせずにできるだけ早く判断をくだすように指示をした文法性判断課題の結果の暗示的知識の指標としています。文の文法性(2水準)と課題(2水準)を独立変数として,文法性判断課題の正答率を従属変数とした分散分析を使用しました。結果として,文の文法性の主効果のみが有意であり,学習者は対象とした言語項目の意味的制約に関する知識表象に欠陥がある可能性を指摘しました。

Tamura, Y. & Kusanagi, K. (2015b). Measuring Japanese learners’ explicit and implicit knowledge of constraints on verb semantics: A case of assertive predicates in English as a Foreign Language. International Journal of  Curriculum Development and Practice, 17 (1), 25–38.

Tamura & Kusanagi (2015a)

標準

日本人英語学習者の明示的・暗示的文法知識を,時間制限のない文法性判断課題と読みなおしをせずにできるだけ判断を早くするようにと指示をした時間制限あり文法性判断を使って調査した論文です。Kusanagi & Yamashita (2013)のパラダイムを援用し,学習者の習得が困難であるとされる名詞句の可算性に焦点を当てました。具体的には,数えられる可算の普通名詞(e.g., cat/cats)と数えられない物質名詞(e.g., gold)についての知識を文法性判断課題で検証しました。可算の普通名詞は時間制限の有無でパフォーマンスが著しく悪化するのに対し,物質名詞は正答率が低いものの時間制限の有無の影響を受けないことが明らかになりました。これによって,明示的・暗示的知識の表象が文法項目によって異なる可能性が示唆されました。

Tamura, Y., & Kusanagi, K. (2015a). Asymmetrical representation in Japanese EFL learners’ implicit and explicit knowledge about the countability of common/material nouns. Annual Review of English Language Education in Japan, 26, 253–268.