Nishimura et al. (2018)

NICT-JLEコーパスから得られたデータを用いて,第二言語学習者の口頭産出パフォーマンスをネットワーク分析という手法で記述した論文です。これまでは,学習者のパフォーマンスは言語データから算出される様々な指標を正確さ,複雑さ,流暢さなどの観点から分析することが試みられてきましたが,これらの指標の関係性は学習者の能力に依存して変化する複雑な系をなすと考えられます。そこで,複雑系理論に基づくネットワーク分析を行い,上位群と下位群ではネットワークにおける中心性の指標が異なることや,指標間の関係性も異なることなどを示しました。これらの結果は,一意的に変数を取り上げてその指標の関係性や変化を議論する危険性を示唆しており,ネットワーク分析という手法がこの点で有用性があることも示していると考えられます。

Nishimura, Y., Tamura, Y., & Fukuta, J. (2018). Network structures in L2 oral performance: A learner corpus study. Annual Review of English Language Education in Japan, 29, 113–128. [Full Article]