Tamura (2023)

有生性階層(Animacy Hierarhcy)に基づき,言語によって名詞の複数形を許容する程度が異なると言われています。日本語は有生と無生の名詞を区別しており,後者は英語と異なり,複数形の標識が付与されにくくなっています(例:?本たち)。このような違いは,日本語を第一言語とする英語学習者にとって複数形形態素の習得を困難にする原因となる可能性があるのではないかという仮説を立てました。本研究では,文処理中において有生性が英語の複数形形態素の処理に与える影響について検討しました。実験では,34名の日本語を第一言語とする大学生英語学習者を対象に,移動窓方式の自己ペース読み課題を実施し,読解中の任意の区域で単語数が1個か2個かの判断を求めました。この課題のロジックは,複数形の名詞を1語と判断するのに要する時間は,単数形の名詞を1語と判断するよりも複数という名詞に付与された情報の干渉によって長くなるであろうという予測に基づいています。もし有生性が重要であれば,日本語では複数形になりにくい無生物名詞に対してはそのような干渉を受けないのではないかと予測しました。しかしながら,有生名詞,無生名詞のいずれにおいても学習者は干渉効果を見せ,複数形の際に反応時間が長くなることがわかりました。したがって,有生性階層に基づく予測が支持されませんでした。論文中では,なぜこのような結果になったのかについても議論しています。

Tamura, Y. (2023). Investigation of the relationship between animacy and L2 learners’ acquisition of the English plural morpheme. Journal of Psycholinguistic Research, 52, 675–690. https://doi.org/10.1007/s10936-022-09915-2 [Read Online]

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