この研究では,スピーキングタスク中の自己修正(self-correction)行動中に学習者の注意がどの側面に向いているのか,そしてそれはタスクの認知的な負荷の影響を受けるのかという点を調査しました。認知的負荷の高低を操作した2種類の地図タスクを用意し,学習者はその課題に取り組んだあとに刺激再生法によるインタビューを受けました。インタビューのコメントを概念化,語彙選択,文法化,音声化の4つのカテゴリに分類し,自己修正中の認知プロセスを分析しました。その結果,負荷の高いタスク中には文法化よりも概念化を行う頻度がより高かったのに対し,負荷の低いタスクではそのような違いが見られなかったことが明らかになりました。また,熟達度の高低によって概念化の頻度に差は見られなかったものの,熟達度の高い学習者は語彙よりも文法面により注意を向けることができることが示唆されました。
タスク
Fukuta et al. (2017)
言語教育研究においては、学習者と教師、および学習者間の口頭コミュニケーション活動についての重要性がこれまでも指摘されてきたが、日本の英語教育においても、授業に口頭コミュニケーションを取り入れる必要性が徐々に認識されつつある。本研究では、真正性の高い有意味な言語活動を促進するために作られたタスクの基準(e.g., Ellis, 2003; Ellis & Shintani, 2014)を用いて、中学校教科書に含まれる口頭コミュニケーションを志向 する活動がどのような基準に合致しているかを分析した。そしてその結果をもとに、中学校教科書に含まれている活動をそのまま用いることによって、学習者の言語スキル向上に対して結果が期待できるか、またはできないかについて、第二言語習得研究の研究結果を参照しながら考察した。そして教科書に掲載されている活動の多くは、そのまま用いると 自発的に発話内容を言語化するプロセスを学習者が経験したり、言語習得上有意義な意味交渉が起こったりすることが期待できないことを示唆した。