Tamura & Nishimura (2016)

名詞の複数形の頻度が高い複数形優位名詞(plural-dominant nouns)と,単数形の頻度が高い単数形優位名詞(singular-dominant nouns)の処理と表象について,日本語訳と絵とのマッチングタスクを用いて検証した論文です。単数形もしくは複数形で刺激語が提示されたのち,日本語訳か絵が提示され,刺激語の表すものと一致しているかを判断するタスクを日本語を母語とする英語学習者に課し,反応時間を比較しました。結果として,日本語訳とのマッチング課題では複数形に対する反応が単数形に対する反応よりも早かったのに対し,絵とのマッチング課題では複数形優位名詞の複数形に対する反応は複数形優位名詞の単数形よりも早いことが示されました。これは,複数形優位名詞の複数形は意味概念への直接的なルートを通るのに対し,複数形優位名詞の単数形はいったん日本語訳を介して意味概念にアクセスしている可能性を示しており,単数形と複数形の頻度の違いにより単語の処理プロセスが異なる可能性を示唆しました。

Tamura, Y. & Nishimura, Y. (2016). L2 word processing of singular- and plural-dominant nouns in English. Journal of the Japan Society for Speech Sciences, 17, 17-37.